ゆき


01.

はらはらと、舞い落ちる白い粉雪。
はしゃぎながら、その中を走り抜けていく、
茶色い髪の女の子。
視界がどんどん白くなり、そして、目が覚めた。

「おはよ、マリュー」
目を開くと、目の前には、ブルーの瞳。
珍しく、彼の方が先に目が覚めたようだ。
「おはよう、ムウ。」
声をかけると同時に、おはようのキス。
その後に、優しく抱きすくめられる。

肩口に鼻を擦りつけるように甘えると、
「どした?」
と彼が顔を覗き込んでくる。

彼に微笑み返し、
「小さい頃の、夢を見たの…」
と呟くと、

「マリューの小さい頃の夢?」
と、青い瞳をくりくりっとさせる。

「別に、夢というか、情景かしらね」
とまた呟くと、彼は髪を優しく梳きながら
「どんな夢だった?」
と問う。

「小さい頃、寒いところに住んでいたの。
 それで、よく、クリスマスの頃に、
 雪が降ってて、その中で走り回っててわ。」

彼は、くすくす笑い、
「おてんばマリューさん?」

ちょっと、頬を膨らませながら、
彼の大きな背中に手を回しながら、

「ねぇ、ムウ、ゆきって見た事ある?」
と聞くと、
「実はないんだよね。俺、ほら、
 生まれも育ちも暖かいところだったからさ。
 マリューはいつまで雪の中で走り回ってたの?」

「結構大きくなるまで、そこにいたわ。
 降った雪を丸めてスノーマンとか作ったりして」

「スノーマン?」
「そう。雪の玉を大きくなるまで転がして、
 人の形というか、まあ、頭と胴体を作るの。
 結構楽しいのよ。」

「じゃぁ、今年のクリスマスは雪のあるところで
 過ごそうか。二人で、スノーマン作ってさ。」
彼の青い瞳がきらーんと光る。

「今から?しかもスノーマン作るの?」

彼が、ベッドから飛び起き、彼女を抱き上げる。
「決めたっと。」



02.

「うぅ〜、寒い……。」
ダウンジャケットの襟元をぎゅっと握り締め、
スカイグラスパーから、ムウが降りてくる。

「っていうか、大丈夫か?」
スカイグラスパーからマリューも降りてくる。

「さむ〜い…。」
彼女も同じく、ダウンの襟元をきゅっと握り、
彼の姿に目をやると、二人目が合い、
何だか少し、気恥ずかしい。

いきなり、あの後、簡単に防寒具を
旅行かばんに詰め込んで、スカイグラスパーで
南極まで来てしまった…。
いくらクリスマスといえども、
戦闘機で南極まで行くとは思いもしない。

「やった、マリューこれで
 ホワイトクリスマス達成だな〜」
ムウを見ると、寒さを全身でこらえながら、
親指を立てて、寒さに引きつった笑顔を返してくる。

しかし、空は快晴、背後では氷山の袂に、
無数のペンギンがとことこと歩いている。

「ム、ムウ…。」
確かにホワイトではあるが、雪は降っていない。
まあ、折角、南極まで二人で来たのだから、
野暮なことは突っ込まないようにしようと
彼女は思った。

「なぁ、で、つくろーぜ、スノーマン!!」
ムウは異様に、スノーマン作りに
意欲を燃やしはじめている…。というのか、
どうやら、寒くてじっとしていられないらしい。

そんな、彼に、促されながら、
ふたりきりで、スノーマンを作ってみる。


そんな、クリスマス。





"クリスマスイヴには甘いひと時を、
 クリスマスの日には二人で南極デートを…。"

妄想が、妄想を呼び、やんわりと捏造まで
してしまいましたが、なんとなく、マリューさんは
雪のある地方生まれで、ムウは南国あたりで
生まれたようなイメージというかそんな設定です。

あまり雪が降らない地方で雪が降ると、
雪かきと称して、子供たちの雪遊びに付き合って
雪だるまやかまくらとか作って遊んだり
結構大人になっても楽しんでしまう。

クリスマスに雪が降ると、恋人がいなくても
何だかわくわくしてしまう、
(そして、虚しさに気づいて酒(ry…)

そんな、感じをつたえられたら…。