Back

おるすばん

1
「じゃあ、お留守番お願いね♪」
そういうと、3歳の幼い娘を抱き上げている、
浮かない顔の夫を残し、家を出た。
「あっ、マリュー忘れ物…」
夫が呼びかけるので、慌てて戻ると、
さっきの浮かない顔から一変して笑顔だった。
「???、何か忘れたかしら?」
「俺♪マリュ〜いってきますのちゅぅv」
「もぉう、しょうがないわね…」
ちょっとあきれながらも、
ころころ表情の変わる夫にそっと、キスをした。

マリューたちが出かけてしばらくして、
居間のソファーにたたずむムウのそばに娘がやってきた。
「ぱぱぁ、遊んで〜」
茶色のふんわりとやわらかい髪に茶色がかった瞳が
ムウを見つめている。
手には画用紙とクレヨンを持ってきている。
どうやら愛娘は絵を描きたいようだ。
「ん、いいよ、何したい?」
「あのね、お絵描きしたいの〜」
きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐ娘を見て、
彼女の幼い頃もこんなかなぁと、
妻の面影を持った愛娘を抱き寄せ、ひざに乗せる。

「ぱぁぱぁ、お膝に乗ったらお絵描きができませんよ〜」
「ん、はいはい、じゃぁぱぱの絵描いて?」
「はぁ〜い」
娘は元気良く手をあげると、画用紙に向かう。
そんな娘をやさしげに見守る。

一生懸命、ムウを描く我が子を見守っていると、
急に娘の手がとまった。何やら、考えているようだ。
どうしたんだろうと、声を掛けようとしたとき、
娘が見慣れた仕草をしはじめた。
髪の毛をくるくると指でもてあそびはじめた。

愛娘の仕草に、ムウの顔から笑みがこぼれる。
と同時に娘を抱きしめたい衝動にかられる。
娘はその仕草を幾度か繰り返した後、また絵を描き始めた。

「出来ました〜」
娘がはにかみながら画用紙を後ろに隠す。
「あれ?見せてくれるんじゃないの?」
と問うムウに、
「だめぇ〜ままが帰ってきてから〜」
といって急にぱたぱたと走り、子供部屋にかけていった。
一人居間に取り残されたムウは、
ふっと先程の娘の仕草をおもいだしながらそっと微笑んだ。

2
しばらく経って、娘が部屋から戻ってこない事に気付き子供部屋に出向く。
と、娘が部屋のドアからムウの様子を伺っている。
ドアから顔を半分、首をかしげながら覗いていた。
「ぱぱぁ、見たくないの?」
ちょっと不安気にムウに問う。
「ままが帰ってくるまでだめなんじゃないの?」
「ぱぱが見たいなら見せてあげるよ〜」
「なら、みたいな。み〜せ〜てv」
娘の背丈にあわせ、ドアの袂にしゃがみこむと
娘の顔がぱぁっと明るくなり、部屋の中に画用紙をとりに急いだ。
ドアの袂で待っていると、娘が画用紙をムウに手渡した。

「は〜い」
渡された画用紙の中の世界には、たくさんの笑顔があった。
「お、いっぱいかいたなぁ〜」
満面の笑みを携えながら娘に絵を説明してもらう。
「んとね、これがちぃおねぇちゃん」
茶色の丸に簡単なにこにこ顔が描かれている。
「これはおねぇちゃんで、こっちがまま。」
黄色の丸に青いにこにこした顔の隣に姉と指し示されている絵より
ちょっと大きめの茶色の丸に茶色いニコニコ顔。
「あれ?ぱぱの絵はないの?」
と問うと、娘ははにかみながら、
「ぱぱはここ全部!!」
と画用紙を指す。すると、画用紙ぎりぎりに
黄色いおっきな丸が描かれている。
「ぱぱはあたしたちを守ってくれるの。だからおっきぃの。」
と、得意満面でえへんと胸を張った。
そんな様子をみて、たまらなくなり、ちっちゃい頭にぽんと手を乗せ、
くしゃくしゃと頭をなでる。
娘もそんなムウに少しはにかんだやわらかい笑顔をこぼす。

3
やがて、夕方になり、娘を抱き上げながら居間に向かう。
「そろそろ、マリューも帰ってくる頃かな…」
ふと娘を見やると、先程まで元気いっぱいだったのに、
今は眠そうに目をこすっている。
「おやおや、眠くなっちゃったのかな?」
「う〜大丈夫だょ…」そうは答えているが、
ちょっと眠そうだったので一緒に居間のソファーに座る。
とたんに娘は目をしぱしぱさせ、
うとうとと眠りの世界に引き込まれそうになっている。
ムウは近くのブランケットを手にとり、そっと娘に掛けてやる。
「ちょっとはしゃいで疲れちゃったかぁ〜」
そっとつぶやき、娘の髪をやさしくなでる。
「……守るよ、おまえたちの笑顔も、何もかも…」

4
「ただいま〜遅くなってごめんなさいね〜」
いつもは帰ると一目散に飛んでくる夫がいない。
何か拍子抜けした感を持ちながら、居間の扉を開けると、
ソファーにムウと一番下の娘が仲良く眠っている。
外からはばたばたと走ってくる足音を聞きつけ、
マリューはまた玄関に戻る。

「はいはい、ちょっと静かにね♪」
ウィンクしながら一番上の娘に断りをいれると、
伝言ゲームのように後ろの方に指令が伝わっていく。
母娘で口の前で人差し指を立てながら、ゆっくりと、ひっそりと
居間を静かに通り過ぎ、自分たちの部屋に戻っていく。

マリューは娘たちを子供部屋に送り込んでから、
居間に行き、ムウにそっとブランケットを掛ける。
「きゃっ!!」
急に手首をつかまれ、抱き寄せられる。
「もぅ、起きてたの? うたたねしちゃったの?
 ちょっと気持ちよさそうだったから…」
隣の末娘を起こさないようにひそひそ声で話す。
「おかえり…(ちゅっ) う〜つられてちょっと気持ち良く寝ちゃったよ〜」
軽くマリューの額に口づけてから、末娘を見やり、髪をやさしく撫でる。
「子供って、結構親のこと見てるんだな〜」
とすやすやと眠っている、末娘のブランケットを正す。
マリューはムウを不思議そうに見つめ、笑顔で問いかける。
「あら、どうして?」
「ん〜 今日はいろいろ発見があったよ。ちょっと楽しかった。」
「あらあら、いつもおるすばんは嫌〜っていうじゃない、珍しいわね。」
すると、末娘が目をゆるゆると開けた。
「あ〜ごめんな、起きちゃったかぁ。」
そっと、ムウが娘を抱き寄せる。まだ、娘は眠そうに目をこすっている。
「ただいま〜おねむ?おなかすいた?」
マリューが末娘にやさしく問いかける。
「ままお帰りなさい。まだちょっと眠い…。おなかちょっとへりました。」
「そ、じゃあ、ご飯の準備しないとね…」
そんな会話をしていると、娘たちが部屋から出てきた。
「「あ〜ぱぱ、起きちゃったの〜」」
みんなソファーに集まってきた。ソファーとムウとマリューの上に乗りかかる。
「おいおい、ままの上はだめだぞ、
 ままの中の赤ちゃんがびっくりしちゃうだろ!!ぱぱの上においで」
「「は〜い」」
その後、ソファーの上で、お出かけ組の出来事等を
 聞いて幸せそうに家族全員で笑っていた。

5
食事も終わり、娘たちが寝た後、ダイニングのテーブルで二人きりで話す。
「ねぇムウ、さっきの話、何かあったの?」
「ん?なんか話したっけ?」
「ほら、子供が親を見てるとかって言ってたじゃない。」
「おうおう、それかぁ、うんうん。
 マリューと俺って出会わなかったら何やってただろうなぁ」
マリューはムウの言いたいことがさっぱりわからず首をかしげる。
「なぁに〜どうしたの?ムウ…」
きょとんとしながら問うと、また質問が帰ってくる。
「マリューは小さい頃どんな子供だった?」
「えっ?何で急に?どんな子供って…」
ちょっと考えているのか、うつむく。

そして、例の仕草、髪の毛を、くるくるまわしはじめる。
ムウの顔がぱぁっと明るくなる。
「そうそう、その仕草。今日さ、あの娘とずっと一緒にいてさぁ〜、
 何か考えてたみたいなんだよ。
 そのとき、今のマリューみたいに髪をくるくるしだしてさ、かわいかったぁ〜
 子供って案外親の姿が見えているんだなって思ったよ。」
 
「え〜そうだったの?この、髪の毛くるくるってやるの?あの娘〜」
マリューは驚きの表情で、ムウに問う。
「かわいかったとかいって、ちゅぅとかへんなことしてないでしょうねぇ〜」
と、ムウの蒼い瞳をやわらかな微笑みで見つめながら言った。
「マリューもこんな娘だったのかなぁ、
 なんて思いながら思わずぎゅぅっとだっこしちゃったよ〜」
二人で笑いながら、そっと子供部屋に行き、
娘たちの寝顔を見ながらそっと二人でキスを交わした。


ムウがぱぱんやってる姿萌え。
近頃はこんな妄想ばかりです。

一応家族構成は
長女4歳(金髪碧眼)
次女3歳(双子姉・マリュと同じ)
三女3歳(双子妹・マリュと同じ)
マリュの腹の中に一人(妊娠6ヶ月)

マリューの髪くるくるをマリュ似の娘がまねっこしたら、
ムウはいちころだろうなぁなんて妄想から。
次は娘の髪の毛を一生懸命結ってるムウが書きたいなぁ…。