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晴れた日に。


1.
ふと、彼は青い空を見上げた。
「ん、何か良い天気だな〜」

ここは、オーブの市街地にある公園。
ふらふらと散歩を楽しんでいるムウに向かって何かが飛んでくる。
ふっと目の前を横切ろうとするものに手を出し、キャッチする。

遠くから、人の声がする…。

"あっ、すいませ〜ん、ボール、すいませ〜ん!!"
短いスカートをはいた女の人がムウがキャッチしたものを
取ってくれと言っているようだ。

「あ、すまん。」
といって、手に取ったものをひょいっと投げる。
"ありがとうございま〜す!!"
そういって、少女は黄色いボールとともに去っていった。

ぽかぽか陽気を満喫しようと、ベンチに座る。
すると…

ぽん、ぽんぽん……。

目の前に、黄色いテニスボールが転がってきた。
そいつをひょいっと拾い上げ、あたりを見回してみる。

と、さっきの少女がはぁはぁと息を切らし、
きょろきょろしながら走ってくる。

彼はくすっと笑いながら、
「お探し物は、コレ?」
っと彼女に向かって話しかける。

すると、彼女がムウの目の前でぜぇはぁ息を整えながら、
「あっありがとうございます… はぁはぁ」
といって、ボールを持って去っていった。

ムウも何の気なく、その方向へ歩いていった。


2.
しばらくあるくと、高い壁があり、
その横の狭い広場に先程の少女がいた。
壁に向かって、一人でテニスをしている。

「へぇ〜、壁打ちねぇ。」
と一人つぶやくと、その少女の壁打ちに目を向けた。

"あっ!!"

という声とともに、またも目の前にボールが転々とやってくる。

「どうも、ボールに好かれちゃったみたいだな〜」
と頭をかきながら、さっきの少女にボールを渡す。

「度々すいません…」
と少女がうなだれたので、

「なぁ、ちょっとコレ、貸してくれないか?」
と少女に問うと、

少女はきょとんとして、
「ハイ、いいですよ?」
と笑顔でラケットとボールをムウに手渡した。

「よしっ!!」
とちょっと気合を入れると、
ムウは空に向けて黄色いボールを放り、
"しゅぱっ!"とラケットを振り落とした。

ボールはあっという間にムウの手元から壁に当たり、
跳ね返って、またムウの元に戻ってきた。

そして、ふわっとジャンプしながらラケットでボールを打つ。
トップスピンのかかったボールが壁に当たると
低く、速い弾道でムウの元へと帰ってくる。
しばらくスピンをかけながら壁に打っていると、
今度はボールに逆回転をかけると、勢いが弱まり、
ふわっと浮き、壁に当たる。

壁に当たる間際、その落下地点まですばやくダッシュし、
今度は壁の上部めがけて打つ。
そうすると、今度はちょうどロブが上がったような体制になり、
それを追いかけ、股の間から、しゅぱっと打つ。
そして、元居た地点まで打点を修正しながら戻っていく。

そんな彼の姿を見ながら、少女は拍手を始める。

「ん…、あっ!!」
ムウは自分が壁打ちに熱中していたことに気付き、
ボールをキャッチして少女の元に向かう。

「ごめん、ごめん、つい熱中しちまって…」
少し、頭をくしゃっとしながら少女にラケットを返す。
「いやぁ、凄かったです…」
と顔を赤らめ、彼からラケットを受け取る。

「ん、練習の邪魔してごめんね、そんじゃぁ」
といって、ムウはひらひらと手を振り、少女の元を去っていった。


3.
「で、今までどこへ行かれてたんですか!?」
ぷぅっと膨れたマリューの顔を見ながら、
「ごめん、ごめん」
と手を拝み合わせて謝る。

「で、ほら、おみやげ買ってきたから。」
靴を脱ぎながら、白い袋を彼女に渡す。

「何ですか?これ?」
と彼女が不思議そうに袋の中を見る。

すると、大きなテニスラケット二本と、
小さなテニスラケットと、缶に入ったボールがいくつか入っていた。

"これで、青い空の下で、3人で遊ぼうよ。"
ムウは愛しい家族に向けて、微笑んだ。


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マリュさんもこどももあまり出てこないんですけど、
しあわせそうな、ムウさんです。

はじめの娘が生まれて、娘とマリューといっしょに
何かしたいなぁ〜なんて、思いつきで
テニスラケット買っちゃったムウさん。

買うとき、"この小さいのいくつから使えるんだ?"人に聞いて、
"ちっちゃくて軽いから3歳くらいから使う子もいますよ〜"
なんて言われて、頭の上でもやもやもや〜って、

娘が覚束ない足取りで嬉しそうにラケット持って、
マリューが心配そうにしながら、
ムウは嬉々として、娘とマリューにテニス教えてたりする
そんな情景が目に浮かんで、思わず衝動買い…。

そんな、感じです。